縁
縁
ある職場でお金を机の上に置き、その場を離れ、その隙に盗難に遭うという事件が起こりました。防犯カメラのお陰で、犯人は職場に出入りする人だとわかりました。泥棒目的で職場に入ったわけではなかったのですが、誰もいない職場に手を伸ばせば、そこにあるお金に誘惑され、つい出来心で盗んでしまった。もちろん盗んだ者が罪になりますが、人の目の触れるところにお金を置きっ放しにした人も問題です。人間の犯す悪事には、それに至った本人の願望、欲望が原因なのは事実ですが、それだけでは悪事は起きません。自分の心の中に存在する目に見えない願望が、何か外から働きかけられた縁に触発され、その人の言動となって現れてしまうのです。
畑にまかれた種が、夏の太陽や土中の養分に触発され、芽を出し、実をつけるようなものです。
「誰もいない部屋の、人目のつく場所にお金を置た」という状況(縁)を作ったのが、問題です。誰も見ておらず、自分が盗んだとは誰もわからない、と確信できる環境なら、人はやりかねません。それでも絶対そんなことはしない、とはっきり言い切れる人はどれだけあるでしょうか。 罪を造った人も問題ですが、造らせた人も問題なのです。
