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お墓は誰のためのもの

カテゴリー:コラム    更新日:2015 年 10 月 1 日

 お墓は誰のためのもの。と問うと、何をいまさらお墓は故人を供養するためのものに決まっているだろう。そう答えが返ってくることは承知のうえで問いかけたのですが、皆さんもそのように考えていませんか。
 お墓は故人の供養だけでなく、お墓を介して、今を生きる私たちにとって、重要なものではないかと思います。
 誰にとっても大切な人、愛する人を亡くすことは大きな苦悩であり、深い悲しみであります。しかし、死という時を境にして、生きる者と亡くなった人とは、同じ世界に共存することは出来ない。そして時間の経過とともに、その距離感は離れていくものであり、自然のことだと感じます。
 なぜなら、亡くなった人のことを毎日毎日、朝から晩まで、何か月も何年も思い続けていれば、その人は生きる気力を失ってしまいます。生きる者は、明日に向かって元気に生き続けなければならないからです。そのことが「いのち」を受けた者の宿命だからです。しかし、亡くなった人を思わなくて良いということではないのです。生きる者と亡くなった人が、適度な距離感を持つということが大切なことなのです。
 供養とは、亡くなった人を思うということであり、その心の表現が、お内仏(仏壇)を購入したり、お墓を立てたりとの行為となり、香を焚き花を捧げ、法事を行う。いずれの行為も、亡き人への感謝(供養)の心が具体化したものなのです。
 感謝(供養)の心が、物・形を介することによって、亡き人との、よい距離感が保てることになってくるのです。
 親鸞聖人は「南無阿弥陀仏」の六字名号だけで阿弥陀仏を観想(一心に思いを凝らす)することが出来るといっています。私たちは阿弥陀仏の像を必要としているのです。
 亡き人に対して、よい距離感をもって感謝の心を維持させるために、仏壇、お墓の存在は大きいものがあります。
 ここでは、お墓について考えてみることとします。ご承知の通り、お墓には亡き人のお骨を納められていて、非日常的空間の中で、亡き人の供養(感謝)の為だけに時間をかけて訪ねる。春・秋の彼岸など年に何度かのことですが、より亡き人への思いは強まり、供養(感謝)の心が高まるものです。
 感性の澄んだ状態で、花を供え香を焚き、手を合わせて、家族のこと、気がかりなことを報告し、対話したり、見守ってほしいとお願いしています。しかしそれらに対して、お墓が応えてくれることはないのですが、自問自答することによって、方策が浮かんだり、明日から元気で頑張ろうと勇気がわいてくるものです。
 また、誰にも相談できない悩みなども語りかけることが出来る。答えはないまでも、心を開くことで随分と心が楽になる事もあります。納骨の時は悲しんでいた人もお墓参りの後は、清々しい表情で帰っていきます。お墓は、お墓参りを済ませた者に明日への活力、勇気を与えてくれるだけでなく、大きな精神の浄化作用を与えてくれます。
 また、お墓は家族と共に墓参りをすることで、家族の深い絆ともなり、亡き人の供養(感謝)だけでなく、今、生きている家族にとっても大きな連帯の力を与えてくれます。
 最近は、子供たちに負担をかけたくないと、お墓を立てる事を躊躇している親が多いと聞いていますが、これは、一見、子ども思いの物分りのいい親に思えますが、果たしてこれは子供たちが悩んだとき、お墓参りをし、勇気と活力を得て明日へと歩み始めるのであれば、その機会を奪っていることになるのではないでしょうか。
 過保護の中では、一人立ちする立派な人格は育たない。 その意味から子どもたちに負担をかけることで、子供たちが、立派な社会人として世に認められることになるのではないでしょうか。子供への負担をかけないことから、樹木葬や海洋葬など散骨を選択している人もいますが、昔は故人の遺志により、ほんの一部を好きな山や海に蒔いたものですが、今は全骨を散骨処理してしまうようです。残された者が亡き人への思い、すなわち感謝の心をどこに向ければいいのか難しいことです。
 人は太古の昔から連らなる「いのち」の流れの中にあり、70年、80年と「いのち」をつなぎ、生きた人生は重いものがあるものです。人生の最期を意識する生き方をすることによって、人としての正しい生き方が出来ると思います。
 お墓とは亡き人への深い思いが、供養の形を生み、生きる者に勇気と活力を与えてくれ、人生を正しく生き抜く意志の根底にあります。お墓を立てるという行為について、今一度深く考えてみる必要があるように思います。
 お墓を建てても継いでくれる者がいないという人のいることも現実ですが、この様な人の為には永代供養墓という新しい形の墓もあります。
 いずれにしても、人として生き抜いた人生を、遺骨処理とも思える方法で済まそうとしている場合も見られますが、はたして人の一生という重みを、この様な方法で処理していいものか大きな問題でもあります。もう一度考えてみたいものです。
          「霊園ガイド」より


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