臨終にのぞんで
都下の団地に住む男性N夫さん(四十五歳)が、妻のB子さん(四十歳)と長男(十五歳)・長女(十歳)の子ども二人を残して急死しました。 病院から知らせを受けたB子さんは、急いで駆けつけ遺体と対面しました。 そして、亡き夫を自宅に引き取り、布団に寝かせましたが……このように、いつ、どこで肉親の死がおとずれるかわかりません。呼んでも応えることのない死の悲しみが、じわじわ込み上げてくるのも、この時です。B子さんにとって、夫の死は戸惑いと悲しみばかりでありましょう。しかし、いつまでもじっとしているわけにはまいりません。まず、ご親戚に連絡します。そして、手次の寺(日頃世話になっている寺)の住職になくなったことの報告をします。でも、B子さんは初めての経験で、日頃お世話になっているお寺がありません。また夫の郷里のお寺は遠隔地。団地近くのお寺もわかりません。ここで大事にしていただきたいことは、葬儀を営むに当たっての宗教の選びかたです。郷里のお手次ぎ寺にお願いする、あるいは生前信仰していた宗教で行なうのも方法でありましょう。しかし、それらが、かなわないならば、なおさらその選びかたを大切にして頂きたい。
従来、葬儀は、宗教をもってなされてきました。人間の理知では計り知れない死がもつ不安や恐れ、あるいは深い悲しみの心が、宗教にその救いを求めてきたからでもありましょう。
浄土真宗は、仏の教えを持って、生きることや死ぬことの不安や苦悩・恐れの心から超え出ることを説いているのです。夫の死を目の前にした今、このことをゆっくりと考えても、いられません。日頃から目を向けて、仏法に触れておくことも大切なことです。
