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第29号法話新潟中越地震

カテゴリー:法話集    更新日:2005 年 1 月 1 日

北原 了義師(西照寺住職)

2004年11月23日 源信寺本堂にて

本日は、こちらの源信寺さんにお招きをいただきました。源信寺さんの、報恩講の法話をしてほしいというご依頼を受けて、参上致しました北原了義と申します。越後・新潟の三条教区……新潟県は大きな県でございまして、真宗大谷派でも三条教区と高田教区の二つの教区に別れておりますが、三条教区、ちょうど真ん中の長岡という町、来年四月から長岡市になるのですけれども、今は長岡市の隣にあります三島郡三島町の西照寺の住職をしております。
 今、日本中の一番の話題になっております、新潟県中越地震の被災地でございます。私の寺そのものは、壁にひびがいって、柱との間の壁が剥れたり、お風呂場のタイルがはがれたぐらいの被害でございました。建てて百年経っております土蔵は、後ろの白壁が、土蔵の壁は厚いものですが、そのうちの外側のほうが、真ん中にコマイといいまして、竹の輪で組んだものがありますけれども、そこから外側のほうが崩落致しました。あちこちの土蔵が、大体、被害を受けました。私の所も、土蔵が被害を受けました。そんなことで、人間的には、割合、被害を受けなかったのです。私の寺でも、テレビの放送等では寺の被害のことはあまり言いませんけれども、このたび震源地に近かった小千谷市の山寄りにあるお寺は、ずいぶんひどい状況になっております。庫裏が全部倒壊してしまったり、本堂が傾いてしまったという所がありまして、住職たちはいまだに避難所や車の中などで生活しておられます。何ヶ寺がございまして、大変な被害でございます。
 ちょうど一ヶ月前の二十三日夕方五時五十八分、六時ちょっと前ですけれども、すごいものです。「地震だ」と分かるとか、そんなことよりも、「来たな」というような、完全に家が倒壊してしまっただろうと思うくらいです。私はちょうどこれからお風呂に入ろうと思いまして、脱衣場におりました。そこへ来ましたから、風呂に入っていたらどうだったかと思うのです。その前でしたので、すぐに飛び出しました。十メートルぐらいですけれども、その十メートルを歩くのがやっとでした。全部、揺れています。家族も出て参りまして、ようやくみんなが外に出たと思ったときに、また二回目の余震がありました。それが終わったと思ったら、もう一回、震度六が三回続けてきました。あんな体験をしましたのは初めてです、震度六というのは。
 一番震源に近い川口町は山あいの、魚野川が流れておる所でして、そこにヤナ場があるのです。川に竹のすのこを渡しまして、落ち鮎がそこにみんな入ってくるのです。昔から、炭火で鮎を焼いてくれるのです。男山漁場と言いまして、ヤナ場がある所で有名です。非常にのどかないい所ですが、そこが一番震源に近かったようです。震度七と言っていました。それも、七と記録されていたけれども、電気が消えたものですから、気象庁にも県にも、数字が届かなかったのです。ある程度、電気が回復してから解析したら、川口町の震度計は七を示していたような状況です。最近は、余震もずいぶん収まって参りました。先ほどもそんなお話をしていたのですが、ちょっと法話にならないで、失礼になってしまいました。
 今年十月二十五日から二十八日まで、北海道の札幌別院、私ども真宗大谷派の別院がございますけれども、真宗大谷派の札幌別院でも報恩講を勤まっておりまして、前半は二十日から勤まるのですけれども、その間は他の方がお話になって、二十五日から二十八日まで、私に「法話をしてほしい」という依頼を受けておりまして、「承知しました」と、お約束をしておりました。札幌から、「二十五日午前十一時四十分の飛行機に乗ってほしい」という、航空券が届いておりまして、準備をしていたのですが、二十三日に地震でしょう。家はひびがいった程度ですし、村のお門徒の方もたいしたことがなかったようですので、安堵していたのですけれども、「これだけだったら、北海道に行けるな」と思ったのですけれども、ニュースを聞いて……ニュースと言いましても、テレビは見えないのです、電気がありませんから。小さい携帯ラジオとか、そういったラジオの放送でしか分からないのです。
 私の所から新潟の飛行場に行くには、いつも行くときは車で北陸高速を通って、新潟インターで下りて飛行場に行くのですけれども、高速道路が長岡で駄目になったのです。国道八号線も不通です。新幹線も、例の長岡で脱線して不通になりました。在来線も駄目です。新幹線も在来線も駄目、高速道路も国道も駄目ということになりますと……ずっと迂回すれば、何とか行けるなと思ったのですけれども、そういうときは渋滞して大変なのです。とても札幌に行けそうにもないということで、札幌から、「どうですか」という、電話が来ました。「これこれ、こうで困っている」と言ったら、別の輪番が出られまして、「どうだ?」と言うのです。「これこれ、こうだ」。輪番も、「昨日からテレビでニュースを見っぱなしだ。あんな所から来なくていい」と言われました。「とても行けないから、勘弁してくれ」と言って、北海道へ行くのは勘弁してもらいました。うちで地震の後始末をしていました。何ともなかったと言いましても、御堂の花瓶は倒れる、香炉はひっくり返る。すごく大変なのです。それでも、輪灯の油はこぼれませんでした。寺によっては、輪灯が落ちてしまったという所もあるようです。御宮殿と言いまして、真ん中のご本尊を安置してあります宮形になったのが前に倒れまして、ご本尊がばらばらになってしまったというお寺もございます。私の所はそこまでなりませんでしたけれども、花瓶の水がこぼれるやら、香炉が落ち灰が散らかるやら、中にはろうそく立てが折れてしまったりというのもありまして、その始末をしておりました。そこへ三条の教務所、別院から電話が来まして、二十七日と二十八日の二日間、長岡の西方寺さんで報恩講を勤める予定になっております。小千谷市の山あいにあるお寺のご住職から、法話をしていただく予定にしていたけれども、そのお寺の庫裏が全壊し、本堂が傾いてしまって、住職が、よそのお寺の法話に行けるような状況ではないので、「二十七、二十八日の法話はお断りをしたい」ということがあったのです。長岡のお寺では、急に法話に来てくださる方がいなくなったものだから、三条別院に電話をして、「誰か法話をしてくれる人はいないか」ということで、三条の駐在さんが私の所に電話を寄こしまして、「何とか、長岡の西方寺さんで、報恩講の法話をしてくれないか」ということで、「分かりました。本当は、私は二十五日から二十八日まで北海道へ行く予定だったけれども、そんな所から来なくていいと言われたものですから、二十七日、二十八日に行きましょう」と、ピンチヒッターで行くことにしました。行って、二十七日の十時過ぎから法話を始めたのです。十時四十分に、震度六が来ました。お御堂で震度六が来たら、大変でした。報恩講のお飾りですから、お餅が上がっているやら何やら、それが全部ひっくり返るやら。お参りの方が全部、外に飛び出されまして、地震が収まるまで私はこの場所で、何とかこうしておりました。それでも、やがて収まりました。「さあ、お話をしよう」と思いましたが、もう誰もいませんでした。みんな逃げてしまわれました。総代さんやらが、わずかに二、三人が残っておられましたので、二、三人の方に時間までお話をするようなかたちでした。報恩講のお勤めで、ほかのお寺さんも来られたですけれども、「こんな怖い所にいられないから、帰る」と言って、お寺さんたちは、帰ってしまわれました。お正信偈だけお勤めして終わりました。地震の後は、そういう状況でございました。三条の別院でも、十一月五日から八日まで報恩講を勤めたのです。殊に八日の報恩講は、ご本山から信行院と言われます御連首がおいでになって、それでお勤めになったのです。その報恩講のご満座の、お日中のお勤めをしている最中に、震度四の余震が来まして、それでもみんなが席を立たずに座って、何とか無事に勤まったらしいですけれども、お参りした人は、「怖かった」と言っていました。そんなような格好で、寺の仏事も、おちおち勤められないような状況が続いてきておりまして、ようやくここに来て余震も収まって参りました。先ほどもお話をしたのですけれども、普段ですと、私は長岡から新幹線で東京駅まで、早ければ一時間半ちょっと、二時間ぐらいで参ります。朝は六時半ごろの新幹線に乗りますと、八時半には東京駅に着くような状況でございますので、距離のことは苦にしなくていい状況です。やっとこの間、脱線した新幹線の車輪を撤去して、トンネルの中がどうなっているか。大変、壁が落ちているようで、当分は回復できないようです。今、新潟から長岡まで新幹線は通っています。長岡から湯沢間は駄目でして、この間は代行バス。代行バスは関越高速を通って湯沢まで来るのですけれども、やっぱり道が痛んでおりますので、高速道路ですけど五十キロ制限です。公共の代行バスが制限速度を無視して走るわけにはいきませんので、五十キロで走っています。長岡から湯沢に出るまで、二時間ぐらいかかります。湯沢からは新幹線が走っておりますので、こうして東京に寄せてもらうことができました。ほぼ一ヶ月経ちましたので、ようやっとこういったかたちで寄せていただくことができるようになりました。つづき  今回は紙面の関係と地震災害を体験された先生に御法話を頂くため災害の状況を詳しく話していただきました。
本題については次回よりに掲載致します。


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