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第83号 「親鸞聖人一代記」

カテゴリー:法話集    更新日:2018 年 1 月 1 日

「親鸞聖人一代記」  落語家 三遊亭右左喜 
どうもこんにちは。去年の今頃、やってまいりまして、覚えていますか、こんなちっちゃいの来たの。まあ落語家でございます。
この前もそうですよ。子どもを連れてファミリーレストランに行ってきたのです。最近、ああいう場所に行きますと、タバコを吸っちゃいけない禁煙席というのが随分増えましたね。朝早く行きまして、係の方に、吸いません、お願いいたしますって言ったら、私の顔を見て、おタバコはって。朝早かったので、半分頭がボーットしておりまして、おタバコはと言われた瞬間に、私、ハイライトって。目と目が合っちゃいまして、ああ、これは、間違えたかもしれないな、謝らなくてはいけないなと、一言謝りましたよ。すいません(吸いません)て。まだ分からない方、いらっしゃいますか。あの分かんないと、おいてっちゃいますからね。細かく説明いたしませんので、どうぞ分かんない方、一晩中考えていてください。
子どもが、小学生ぐらいの時でしたね。家に帰ってまいりまして、お父ちゃん、クイズをしようよ。いいよ、どんなクイズ。あのね、パンはパンでも食べられないパンは、なあに。学校で覚えてきたなと、ううん、うん、それはね、フライパン。こう言ったら子どもが、ブー。じゃあジーパンと言ったら、ブーブーブーって言うのです。もう、分からないですから、正直に聞きましたよ、それは、なあにと聞いたら、うん、腐ったパンだって。子どもの考えることは、もう大変なもので、はり倒してやろうかと思いました。
【昨年の話】
 親鸞さんのお話をいたします。お生まれは承安三年でございます。平安時代末期でございまして、幼いころに両親に死に別れまして、九歳の時に比叡山延暦寺に僧侶として、上ります。20年間、ここで修業をいたしまして29歳の時にお山を下りまして、京の吉水(よしみず)というところで、法然さんの草庵にやってまいりまして、法然さんの弟子となりました。「綽空(しゃくくう)」という名前を名乗ります。またすぐに、お弟子さんになったのはいいのですけれども、玉日姫という、九条兼実さんで、摂政また関白も務めた方の娘さんと結婚した話の所で前回(昨年)終わっています。
 実は、親鸞さん、29歳のとき、結婚をいたしました。九条兼実の娘さん、玉日姫でございます。この当時、公然と僧侶が肉・魚を口にする、女性と結婚をするということは、世間でも仏教界でも、大変な大問題でございます。親鸞さんには、雑言、悪口というのを浴びました。仏教界を壊す悪魔、堕落坊主、色坊主、聞くに堪えない悪口を言われました。まあこれに対して親鸞さまは、「ただ人倫のあざけりを恥じず」と、まあ、どういうことを言ったかと申しますと、「どうしてこんなに幸せに救われたのか、阿弥陀仏から受けた深い恩のことを思えば、どんなにけなされようが、悪口を言われようが、私は一歩も引きません」と言ったのだそうでございます。
 親鸞さん、法然さんの居る草庵の時は、大変に幸せな時期、法然さんからいっぱい教えを頂き。また仲間と、この諍論(じょうろん)をする。
諍論というのは、どっちが正しい仏の教えかということを、論議をすること。仏教界の、論理のことを、言うのだそうでございます。たくさんの諍論を交わしたという話が残っております。
 信行両座の諍論
兄弟子が、「おう、綽空」親鸞さまの名前、
「ああ、兄弟子、何でございますか。」
「どうだ、ここに来て随分勉強したか。」
「勉強になりました。いろいろなことを学ばさせて頂きました、ありがとうございます。」
「そうか。じゃあ何かおまえ、ここで分かったことあるか。」
「あります。」
「そうか。話してみろよ。」
「あの最近分かったのですけれど、この専修念仏、阿弥陀仏の教えの中で、一番大切なことが分かりました。」
「どんなことだ、話してみろ。」
「専修念仏の中で一番正しい、大事なことは、信心の心、信じる心が一番大切だと思うのでございますが。」
「ばかなこと言っちゃいけないよ、おまえ、いつも師匠が言っているじゃないか、念仏が大切といつも言っているだろう、」
「それは確かにお念仏、これは大切、それはよく分かっております。お念仏は大切ですけど、信じる心、信心が、私は一番大切だと思います。」
「おいおい、ちょっとみんな集まってきて、何かね、綽空が変なことを言い出したんだよ。あのね、専修念仏で一番大切なのは信心だと言うのだよ。おかしくないか、」
「おかしい」「おかしい」といってみんなに言われましてね。そこに法然さんがやってきました。
「おいおい、おまえたち、何を騒いでいるのだい。」
「綽空が変なことを言い出したのです。これこれこういうわけで。」
「ああ、そうか、なるほどな、一番大切なのは信か行かということだ。うん、おまえらはそれを話し合っていたのだな、これを収めるため、何かうまい手だてはないか、」
「師匠、私に考えがあるのです。」
「綽空、どんな考えだ。」
「全員お弟子さんを集めてください。」全員集めまして、2つのお座敷を用意し「こっちのほうには行と書いて、こっちには信と書いて、どっちが大切か、さあ皆さん、入ってください、」
300人ぐらいいますから。弱っちゃったな、俺はどっちだっていいのだよ、旗色のいいほうに行けばいいんだから、何とかの党の人間みたいな感じでね。俺は受かればいいのだよな。じゃあっというので、ぞろぞろぞろぞろ「行」のほうに入っていく。やっぱりこっちだろうな、希望の党みたいなところに、入っていく。そういうやつは、もう大体、こっちへ来るのはこういうことになるのですね。
 「信」のほうには、ほとんど入っていかない。2~3人しかいない。
 熊谷直実(くまがいなおざね)という、源氏の武将でございますけれども、たくさんの殺生をしたので、法然さんのところで修業をしております。「おう、何だっておめえら、ええ、面白いことをやっているね、ええ、信が大切か、行が大切か、そんなもんは決まってるよってんで」、熊谷直実はなんと信のほうに入っていったんだそうです。とうとう、最後に残ったのは法然さん1人。みんな戦々恐々ですよ。師匠がどっちなのかじっと、こう見ておりまして、さあさあ、皆さん全員入りましたか。じゃあ私がどっちに入るか、よくご覧あれ。
 ドラムロールスタート、ドロロロロロロロロロ、
 法然さんが、さあ入りますよ、どちらにしようかな、神様の言うとおりというので、なんと法然さんは信のほうに入っていったんだそうです。
 専修念仏は、お念仏が大切ですけれども、やはり信心が、これが一番大切ですよという話が残っております。これが、信行両座の諍論と申します。
                        つづき


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