通夜までの心得Ⅳ 納 棺
通夜までに、ご遺体をお棺におさめる。これを納棺といいます。納棺は、できるだけ近親者でおこないます。服装は白服、又は生前に愛用していた清潔な服を着せます。納棺のさい、故人の愛用品をいれることがありますが、火葬の関係上、金属製や陶器などの燃えにくい物は避けましょう。また、湯灌(遺体をぬるま湯などで拭き、清らかにすること)がおすみでない場合は、納棺の前に行ないます。通夜にお参りしますと、死装束を身につけておられるご遺体を見受けることが、よくあります。死装束とは、経帷子とよばれる白い着物を着せ、頭には三角形の頭巾、手には手甲をつけ、足には脚絆を巻き、白足袋草鞋、首からは頭陀袋をさげ、手には杖を持たせるという出で立ちをいいます。これは、人が死んで冥土といわれている世界に旅立つ姿を言うようです。しかし、このような死装束は、民俗信仰や俗信などが重なって成立したものといわれ、浄土真宗の教えとは全く異なるものです。浄土真宗では、従来、人が亡くなりますと、浄土に還られると表現されてきました。つまり、私たちは、死んで冥土に旅たつのではないということです。親鸞聖人は「煩悩成就の凡夫……正定聚に住するがゆえに、必ず滅度に至る」と語っておられます。煩い・悩み、怒り・腹立ちの絶えない身を生きる私たちが、仏さまの大いなる法のいのちに目覚めて、生かされている身と気づくとき、必ず滅度(涅槃)に至る身と定まるという意味です。私たちは、縁あってこの世に生を受け生かされ仏になる身と約束された事実を説くのが浄土真宗です。死んで冥土に旅だつ考えは棄て、亡き人に死装束は全く意味がない、一般に行われているからと言って支度をするのは死者への冒とくすることになると思います。